ある晩、うちの息子が、キッチンで夕食の支度をしている自分のお母さんに向って
何か書いたものを渡しました。お母さんはエプロンで手をふいて、それを読みました。

・お洗濯をした・・・・・50円 ・お風呂を掃除した・・・・・50円 
・お使いに行った・・・・・50円 ・飼い猫のお世話をした・・・50円
・なまゴミを出した・・・・・50円 ・テストでいい点を取った・・・・・50円
合計300円の貸し

 お母さんは返事を待って立っている息子の顔を見ました。
さまざまな思い出が彼女の脳裏をよこぎっているようでした。
彼女は「ふぅ〜」という、ため息と共にペンを取り、その紙の裏にこう書きました。

・10ヶ月間、私の中であなたが元気に育つのを祈り続けたのは・・・無料。 
・病気の時、毎晩寝ずの看病をして治るのを祈ったのは・・・無料。 
・15年間、あなたのために辛い思いをし、涙を流したのは・・・無料。 
すべてを足してみても、私の愛の値段は・・・・無料です。

・怖くて眠れなかった晩、夜通しお話ししてあげたのは・・・無料。 
・おもちゃも、食べ物も、きる物も、あなたの鼻をかんであげたのも・・・無料。 
それを全部足しても、本当の愛の値段は・・・・無料です。

 読みおえた息子の目に、久しぶりに大粒の涙が浮かんでいました。
彼はまっすぐに母親の目を見つめると言いました。
「お母さん、俺、お母さんが大好きだよ」 
そう言ってペンを取ると、大きな字で、彼はこう書きました。
「全額支払い済み」 

 君たちスカウトは、お母さんやお父さん、また多くの人達の
大きな愛情の中ですくすく成長していきます。

 こうして色々な人達にもらった大きな愛情は、いつか自分の大切な人のために
返したあげて下さい。

君達は、傷ついた分だけ人に優しくなれるます
泣いた分だけ 強くなれるます
苦しんだ分だけ 幸せになれます
愛された分だけ 愛することが出来ます
だから いっぱいいっぱい
傷ついて下さい 泣いて下さい
苦しんでください
そしてみんなから愛されて下さい

輿石 修(元BVS隊長)

ボーイスカウト東京文京第5団