カテゴリ: 文京第5団夜話集
掲載日:2008/11/05
 私がスカウトだった頃、入団したてのスカウトは水汲み、蒔き拾いと食器洗いしかさせてもらえませんでした。

 冬の凍てつくキャンプ、小さかった身体の半分はあるかと思うバケツを持ち、キャンプサイトの食管を満杯にするまで運んだものです。
腕が棒になるほど、悲しい思いの中で往復を繰り返しました。
当時、薪は焚き付け用の限られた束しか配給されなく、また無いときも有りました。
あとは班で拾い集めなければなりません。
水と薪は常に一杯に、と言うのが班長の指示でなのです。

 夕食が終わり就寝までの間にも、空いた時間は水汲みと薪拾いでした。
サイト付近にはすでに無く、月の光も届かない暗い山の中を捜し歩きました。
とても怖い思いをしました。
キャンプサイトの近くを流れる小川での食器洗いの仕上げ、ポンチョを着ての作業、指が切れるような冷たい水、涙がこぼれたものです。

 あまりにも寒い氷点下の夜、班長が「かまど」のそばに集まるよう指示しました。
出してくれたのは温かい甘いミルクティでした。
「杉田達が寒い思いをして洗ってくれた食器、一生懸命集めた薪、努力して汲んだ水だから、君達が最初に飲むんだ。」と言って班長は作ってくれました。

 とても美味しく、何故かジーンとしました。

 かまどの炎に照らされた班長の顔がやさしく見えました。

(注:リーダーシップ、安全対策、そなえよつねに)

杉田篤司(元CS・BS・VS・RS隊長)

ボーイスカウト東京文京第5団

カテゴリ: 文京第5団夜話集
掲載日:2008/11/05
 リーダーがヨーロッパで仕事をしていた頃の話です。

 事務所の近くに地下鉄の駅があり、地上には誰も使っていないようなエレベーターがありました。

 ある日リーダーはとても疲れていたので、このエレベーターに乗って楽に地下のホームまで着くことができました。電車の方へ歩き始めると、おばあさんが近づいてきて、「あなたは若いのだからエレベーターは使わなくても良いのではありませんか? あなたがエレベーターを使ったことにより、本当にエレベーターを必要としている人が使えなくなってしまったのですよ!!」と言われました。

 その時のリーダーは59歳で決して若くはなかったのでエレベーターに乗ったのです。その後腰痛を患い、歩くとことがとても辛かった時、あのおばあさんの言っていたことが良くわかりました。おばあさんが言っていたことは、「体が若く元気な人は、体が不自由な人に色々なものを譲ってあげなさい。」ということでした。だから電車に乗った時はシルバーシートには座らず、エレベーターは体が不自由な人を乗せてあげるために君たちは乗らないようにしてあげると皆に喜ばれるのではないかと思います。

宮島隆之(元CS隊長)

ボーイスカウト東京文京第5団
カテゴリ: 文京第5団夜話集
掲載日:2008/11/05
 平成7年の冬に起きた阪神大震災は、死者6千433人、負傷者4万人という被害をもたらしました。

 あれからもう10年になります。

 全国から多くのボランティアが集まり、ボランティアに慣れていないこの国民の間には、被災者にも行政にも、ボランティア側にもたくさんの混乱やとまどいもありましたが、その年が、我が国のボランティア元年と言われるようになりました。

 あの時、私はローバー隊の隊長をしていましたが、私の隊からもふたりの大学生がボランティアに行きました。ひとりは男性スカウトで、もうひとりは女性スカウトでした。この話は彼女が後に報告してくれた話です。男性スカウトは避難所の運営をお手伝いしましたが、女性スカウトの方はある避難所に生活する子ども達の世話をすることになりました。食事の世話、遊びやゲーム、お絵描きなど彼女にとっては、カブスカウト指導者の経験が大いに役立つボランティアでした。

 震災発生後、取るものもとりあえず、自分の生活道具をザックにいれて、女性にはかなりきつい荷物を背負って行きました。しかし、東京でやらなければならない自分の用事が残っていました。そのため、阪神に入って一週間後、いったん東京に帰ってきました。用事をすませて再度現地に行った時のことです。

 公園の広場に張られた子ども達のための大テントの内側に、子ども達が描いた彼女の似顔絵がいっぱい張られてあったのです---------。それを見て、彼女は思いました。『わたしが、被災した子ども達の役にたってるんだ』-----。その時、彼女は初めて自分の行動に“やりがい”を実感したということです。それはまた、ボーイスカウトの「ちかい」の実践であるにほかなりません。

 被災した子どもたちのテントからは、その後も笑い声が聞こえたことでした。深い心の傷はあっても、健気に生き抜いていったということです。

副団委員長 大曽根勇夫(元CS・RS隊長)

ボーイスカウト東京文京第5団

カテゴリ: 文京第5団夜話集
掲載日:2008/11/05
 東京ディズニーランド・ワールドバザールにあるレストランで実際にあったお話です。

 二人連れの若いご夫婦がレストラン「イーストサイド・カフェ」に食事に行きました。
ウェイトレスが2人を二人がけのテーブルに案内してメニューを渡しました。
2人はそれぞれAセット一つとBセット一つ注文しました。
オーダーし終わったとき、奥様が追加注文しました。「お子様ランチをひとつ下さい」と・・・

 ウェイトレスは「お客様、誠に申し訳ございませんがお子様ランチは小学生のお子様までと決まっておりますので、ご注文は頂けないのですが・・・」と丁寧に断りました。

 すると二人は顔を見合わせて複雑な残念そうな表情を浮かべました。
 その表情を見てとったウェイトレスは「何か他のものではいかがでしょうか?」と聞きました。
 すると、二人はしばらく顔を見合わせ沈黙した後、奥様が話出しました。

 「実は今日は昨年亡くなった娘の誕生日だったのです。私の身体が弱かったせいで、娘は最初の誕生日を迎えることも出来ませんでした。子供がおなかの中にいる時に主人と3人でこのレストランでお子様ランチを食べようねって言っていたんですが、それも果たせませんでした。
子供を亡くしてから、しばらくは何もする気力もなく、最近やっとおちついて、亡き娘にディズニィーランドを見せて三人で食事をしようと思ったものですから・・・」

 その言葉を聞いたウェイトレスは2人を四人がけのテーブルに案内しました。
仲間に相談して全員の賛成を得て、お子様ランチのオーダーを受けました。
そして小さな子供用の椅子を持ってきて「お子様の椅子はお父様とお母様の間でよろしいでしょうか?」と椅子をセットしました。
その数分後・・・「お客様、大変お待たせしました。ご注文のお子様ランチをお持ちしました」と
テーブルにお子様ランチを置いて笑顔で言いました。「どうぞ、ご家族でごゆっくりお楽しみください」

 数日後、若いご夫婦から感謝の手紙が届きました。
「お子様ランチを食べながら涙が止まりませんでした。こんな体験をさせていただくとは夢にも思いませんでした。これからは涙を拭いて生きて行きます。また行きます。今度はこの子の弟か妹を連れて・・・」

 このお話をスカウトのみんなはどの様に感じますか?
またお父さん・お母さんでもあるリーダーの皆さんはどの様に感じますか?
人は思い出にすがってばかりでは生きていけません。
でも人はそれぞれ良い思い出も悪い思い出もあります。
良い思い出も悪い思い出も心の中の引き出しにそっと仕舞っておいてください。
そしてこのウェイトレスさんの様に思いやりのある大人になってください。
おわります。

輿石 修(元BVS隊長)

ボーイスカウト東京文京第5団

カテゴリ: 文京第5団夜話集
掲載日:2008/11/05
 ある晩、うちの息子が、キッチンで夕食の支度をしている自分のお母さんに向って
何か書いたものを渡しました。お母さんはエプロンで手をふいて、それを読みました。

・お洗濯をした・・・・・50円 ・お風呂を掃除した・・・・・50円 
・お使いに行った・・・・・50円 ・飼い猫のお世話をした・・・50円
・なまゴミを出した・・・・・50円 ・テストでいい点を取った・・・・・50円
合計300円の貸し

 お母さんは返事を待って立っている息子の顔を見ました。
さまざまな思い出が彼女の脳裏をよこぎっているようでした。
彼女は「ふぅ~」という、ため息と共にペンを取り、その紙の裏にこう書きました。

・10ヶ月間、私の中であなたが元気に育つのを祈り続けたのは・・・無料。 
・病気の時、毎晩寝ずの看病をして治るのを祈ったのは・・・無料。 
・15年間、あなたのために辛い思いをし、涙を流したのは・・・無料。 
すべてを足してみても、私の愛の値段は・・・・無料です。

・怖くて眠れなかった晩、夜通しお話ししてあげたのは・・・無料。 
・おもちゃも、食べ物も、きる物も、あなたの鼻をかんであげたのも・・・無料。 
それを全部足しても、本当の愛の値段は・・・・無料です。

 読みおえた息子の目に、久しぶりに大粒の涙が浮かんでいました。
彼はまっすぐに母親の目を見つめると言いました。
「お母さん、俺、お母さんが大好きだよ」 
そう言ってペンを取ると、大きな字で、彼はこう書きました。
「全額支払い済み」 

 君たちスカウトは、お母さんやお父さん、また多くの人達の
大きな愛情の中ですくすく成長していきます。

 こうして色々な人達にもらった大きな愛情は、いつか自分の大切な人のために
返したあげて下さい。

君達は、傷ついた分だけ人に優しくなれるます
泣いた分だけ 強くなれるます
苦しんだ分だけ 幸せになれます
愛された分だけ 愛することが出来ます
だから いっぱいいっぱい
傷ついて下さい 泣いて下さい
苦しんでください
そしてみんなから愛されて下さい

輿石 修(元BVS隊長)

ボーイスカウト東京文京第5団